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収奪の星 天然資源と貧困削減の経済学 [著]ポール・コリアー

[評者]山形浩生(評論家)

[掲載]2012年06月03日

[ジャンル]経済 国際

表紙画像

■後代に責任とる 合意形成の道

 資源は途上国にとって両刃の剣だ。収入は増えるが、利権と汚職の温床になったり、資源収入への過度の依存で国民の勤労意欲まで消えたり。この「天然資源の呪い」を指摘した一人が、本書の著者コリアーだ。
 でも、あらゆる国は何らかの天然資源を持つ。それをきちんと活用して、天然資源の呪いから脱するには? それが本書のテーマだ。
 その指摘は単純ながら重い。まず、天然資源の呪いは行政能力の問題だということだ。政治家の汚職を監視し、国富を国民に還元する仕組みが弱いので、資源の利益が外国や汚職政治家に吸い上げられ、無駄な投資が起きる。
 さらに著者は、その背後にある思想の問題も指摘する。いまの経済学的な計算方法では、資源は早めに採掘したほうが価値が高い。森林や生物などの環境でもそうだ。だからこそ、乱獲が生じ、温暖化問題も生じる。
 これを変えるべきだ、と著者はいう。後の世代にも資源や環境の便益を残せ、と。
 ただし何でもかんでも残せということではない。資源自体以外に、そこからの収益をインフラ投資や貯蓄に使ってもいい。重要なのは、価値を残すことだ。そうした後代に対する責任を認識し、地球資源の保護者(カストディアン)としての役割を引き受けろと本書は主張する。
 単純な資源問題の本に見えたが、政治的関心向上やら教育の改善、インフラ投資など、みるみる話題が拡大する。そして一見抽象的な議論から具体的な政策が展開され、その一部がすでに実行に移されているというのも驚愕(きょうがく)だ。大局的な世界的合意形成の困難に関する著者の指摘は、暗澹(あんたん)とさせられるが、本書のようにその合意の基盤となる発想を一歩ずつ踏み固めていくしか道はないようだ。資源問題のみならず、今後の国際協力や環境問題に関心ある方もどうぞ。
    ◇
 村井章子訳、みすず書房・3150円/Paul Collier オックスフォード大教授。『民主主義がアフリカ経済を殺す』

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