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ブラッドベリ、自作を語る [著]レイ・ブラッドベリ、サム・ウェラー

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2012年06月10日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■火星で僕の本が読まれるだろう

 訃報(ふほう)から数日たった今、ネット検索すると、日本語の追悼記事やコメントがすでに数万件にも達している。火星に進出した人類が自らを火星人と認識するに至る『火星年代記』、情報統制社会の危険を描く『華氏451度』、少年であることの輝きを閉じ込めた『たんぽぽのお酒』など、多くの作品が「心の一冊」として語られ、20世紀を代表するSFの巨匠がいかに愛され惜しまれているか分かる。
 本書は2010年に米国で出版された自伝的インタビューである。それにしても、90年以上生き、60年以上人気作家でいるということは、自分自身が「歴史」になることなのか。幼年期に大恐慌を経験し、第2次世界大戦も冷戦も自らの時代として生きた。広島の原爆報道が『火星年代記』の中の佳作、全自動の家屋が人間不在のまま稼働し続ける「優しく雨ぞ降りしきる」の着想を与えた話は印象的だ。
 時代の負の部分に敏感に反応しつつ、晩年まで一貫して、おもちゃ好きであり、訪れる町ごとにおもちゃを求めるなど、子どもっぽくあり続けたという。「色彩と運動エネルギーがお祭りになって吹き飛んでいる」と評される無邪気な性格は実に作家のイメージにそぐう。我々が知っている小説家としてだけでなく、様々な博覧会の展示、ショッピングセンターの設計に熱中したことなど、驚きではあるが納得させられる挿話だ。
 読了後、偉大な作家の死を悼むより、見事な人生の完結を祝福する気持ちに満たされた。自らの幕引きについて述べる部分に、感極まる。
 作家いわく――「二百年後の火星で、僕の本が読まれるだろう……少年が、懐中電灯を用意して、ベッドにもぐり込んだまま、火星で『火星年代記』を読む」「火星に埋葬されたい……墓石のてっぺんに小穴を掘って、その下に注意書きがあるんだ。『献花はたんぽぽに限る』」
    ◇
小川高義訳、晶文社・1995円/Ray Bradbury 1920~2012。Sam Weller ジャーナリスト。

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