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レディー・ガガ メッセージ [著]ブランドン・ハースト

[評者]横尾忠則(美術家)

[掲載]2012年06月10日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

レディー・ガガ メッセージ [著]ブランドン・ハースト
■生肉ドレスも謎も、全部アート

 レディー・ガガが裸身に生肉ドレスで「ヴォーグ」の表紙を飾り、キティの人形を全身にまとって被写体になった時、ある意味でネオポップともポストポップともその出現が話題になったジェフ・クーンズ以上の衝撃を受けた。
 彼女は自らの存在をアンディ・ウォーホルの「コピーキャット」と謳(うた)い、そのビジョンや影響を組みあわせて誰もが考えつかなかったものを創(つく)り出し、「予測できない」ポップミュージックに知性を導入した。そんなレディー・ガガのお言葉集が本書「メッセージ」である。
 「放心しちゃうくらいでたらめになって、ゴムなしでセックスしなくちゃ」。驚いちゃいけません。彼女の言葉は詩的な比喩を否定したストレートな表現が持ち前だが、その戦慄(せんりつ)的な言葉の「ミステリーもマジックも全部私のアート」で、ガガの謎の解明に「みんなすっかり魅了されちゃっているのよ」と豪語する。
 世界的大ヒット「ザ・フェイム」により戦略的成功を収めたガガは名声(フェイム)を現実のものにした。そして、自らの中に棲息(せいそく)する悪魔(原罪)と対峙(たいじ)したアルバム「ザ・モンスター」によって彼女の怪物ぶりはマディソン・スクエア・ガーデンのあの圧倒的なライブ・パフォーマンスになり、ひとつの「事件」として記録された。「芥川賞は事件だ」といった広告コピーなどガガの前ではかなり影が薄いのと違うか。
 一方、「過激でデカダンだ」と言われる彼女は自分を憂慮する冷静さもある。父と交わした言葉では「そんな状態で出会う人たちも、できる友達も、いつか全員失うことになるぞ」と釘を刺されたが、ガガは「宇宙に存在する〈より大きな善〉のためにつくす」という自らの使命を固持しながら、「私はもう、普通の人のような人生は送れない」と天と自らの魂に約束。アートと結婚した自分を何よりも誇らしげに語るガガ。
    ◇
川田志津訳、マーブルトロン・1680円/Brandon Hust ライター、作家。『レディー・ガガスタイル』など。

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