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饗宴外交―ワインと料理で世界はまわる [著]西川恵

[評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学)

[掲載]2012年06月24日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■メッセージから読む駆け引き

 クリントン米大統領を招いての晩餐(ばんさん)会。メニュー内容から席次まで細かくチェックした小渕首相は盆栽を飾るよう外務省スタッフに指示し、こう念押しした。「盆栽は蝦夷(えぞ)松だぞ」。国後島原産の樹齢250年の蝦夷松を見せることで北方領土への関心を引こうという演出だった。だが、本番では思わぬハプニングに見舞われる……。
 外交における饗宴(きょうえん)では、料理の素材から飲み物の種類、余興演目、服装、スピーチまで、ありとあらゆる部分にメッセージが込められる。そこに着目して首脳同士の信頼関係や外交の舞台裏を描き出した好著。著者の十八番だ。
 玄人顔負けの知日家だったシラク仏大統領をもてなすための苦労。中国の人権問題をめぐる胡主席訪米時のオバマ大統領の巧妙な仕掛け。饗宴は単なる奢侈(しゃし)ではない。
 激しく変動を続ける昨今の国際関係。そうした時代だからこそ、国のトップ同士が食を共にすることの重要性を本書が再認識させてくれる。
    ◇
世界文化社・1785円

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