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すべては今日から [著]児玉清

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2012年07月01日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■作家の人生を窺う優しい筆調

 本好きの人が書いたらこのような本になる、とのサンプルのような書だ。幼年期に講談本の面白さに目ざめてから、読むわ読むわ、歴史小説、ミステリー小説、純文学まで幅広い。この書には本好きでなければわからないキーワードが幾つかある。
 結婚後、初めて本格的な本棚をつくるが、「かなりのスペースが残された本棚には、限りない未来が約束されている」とか、感動する本に出会っての「著者の思いに強く感情移入しながら、読者自身の体験をより深めることができる」、本屋を覗(のぞ)く楽しみ、原書を読みこなす喜び、思わずわかる、わかるとうなずく。それにしても、作品を通じて作家の人生を窺(うかが)う著者の筆調が優しくて心が和む。
 大学卒業式と母の死が重なり運命が変わる。なるほど著者が本を手にするのも人生を常に確認していたのか。目次や構成がまた本好きの呼吸を感じさせ、著者、読者、編集者が良きトリオであるのが良書と実感させられる。
    ◇
新潮社・1470円

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