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円のゆくえを問い直す 実証的・歴史的にみた日本経済 [著]片岡剛士

[評者]山形浩生(評論家)

[掲載]2012年07月08日

[ジャンル]社会

表紙画像

■円高の害 異様な密度で考証

 異様な密度の新書。企業が円高で悲鳴を上げる中、一面的な容認論も聞かれる。本書は為替レートの根本を解説、金本位制から変動為替制への推移などの歴史をたどり、購買力平価やマンデル=フレミングなど為替の基礎理論を押さえ、近年の円高がなぜ有害かを堅実に説明。そして、理論的な理解をベースに、いまの円高の原因や、それが各種対応策でも改善されない理由が明快に説明され、根底にある今の日本のデフレ経済という大問題へと議論が展開する。
 理論、歴史、政策と、これほど盛りだくさんの内容を、手抜きなしで新書につめこめたのは驚き。各種メディアの評論家や学者たちによる変な円高容認議論のおかしさもわかるし、円高にとどまらない経済全体への視点も得られる。むろんそのためには流し読みではすまず、腰を据えてかかる必要はある。が、無内容な凡百の説教新書とは一線を画する本書は、十分にその努力に応えてくれる。
    ◇
ちくま新書・924円

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