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評伝ナンシー関 「心に一人のナンシーを」 [著]横田増生

[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)

[掲載]2012年07月15日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■「角度」を武器に普遍を切り取る

 時折、「ナンシー関が生きていたら」と思うことがある。テレビを見ながら、言語化できないモヤモヤ感が残る時、あの消しゴム版画が思い浮かぶのだ。
 ナンシー関が亡くなって10年。本書は、ナンシー関の歩みをたどりながら、彼女の批評の核心に迫る。
 若き日のナンシーは、「ビートたけしのオールナイトニッポン」の熱心なリスナーだった。ナンシーの武器である「角度」は、このラジオによって生成された。青森で生まれ育ち、高校時代から消しゴムで作品を作り始め、18歳で上京。大学中退後、その才能が話題を呼び、徐々に雑誌の連載を増やした。
 ナンシーのテレビ批評は、芸能人を取り上げながら、表層的な芸能ネタに回収されない。その表現は社会批評となり、人間のあり方を捉える。だから、今読んでも全く古くない。ナンシーの角度は、常に普遍を切り取っている。
 「心に一人のナンシーを」。いいサブタイトルだ。
    ◇
朝日新聞出版・1575円

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