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妖怪手品の時代 [著]横山泰子

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2012年07月15日

[ジャンル]歴史 人文

表紙画像

■江戸文化の本質が見えてくる

 妖怪研究者として知られる著者の本はいつも注目に値する。今度は手品だ。「妖怪手品」とは、幽霊などを人為的に創(つく)り出す仕掛けのことだ。
 江戸時代の日本人は座敷へ天狗(てんぐ)を呼びつけたり、入道を出したり、蝋燭(ろうそく)が宙に浮くのを面白がり、しかも自分でやりたがった。その好奇心の傾向はからくりを生み出した。からくりはいわば日本のロボット文化の基盤だが、江戸時代はそれが浄瑠璃(文楽)や歌舞伎を変えていった。
 本書では江戸時代に手品と怪談と歌舞伎が深く関係していたことがわかる。今や高尚な伝統演劇になった歌舞伎を、からくりと曲芸を内在させた一大娯楽だったと考えると、江戸文化の本質が見えてくるのである。
 さらに本書は、そのまま明治に入って、江戸川乱歩をも妖怪手品師として観察する。そこに日本の探偵小説の特色が浮かび上がるから面白い。同時代にヨーロッパや中国もまたそういうことに熱中していたという。
    ◇
青弓社・2100円

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