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ガリ切りの記―生活記録運動と四日市公害  [著]澤井余志郎

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2012年07月29日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■文字以上の何かを刻み込み
 
  ツイッターはもちろん、ワープロも一般化していなかったころ、さまざまな社会活動で活躍したのがガリ版印刷だった。
 がりがり音をたてながら原紙に文字を刻む。それを「ガリを切る」といった。一瞬の波及力は望めないものの、そこには文字以上の何かが刻み込まれていた。
 著者は、三重県四日市市で、ガリ版を「武器」に長年、大気汚染公害とたたかってきた。その日々を振り返る。
 1950年代前半、紡績工場で女性工員とともに生活記録運動に取り組み、社会学者の鶴見和子らと交流を結んだ。工場を解雇されて地区労の事務局員に。60年代から公害の被害住民から聞き取りを始め、ガリ版文集「記録『公害』」を99年まで発行してきた。
 「弾圧・圧力があったればこそ継続できたと思う。ほめられていたら、無視されていたら続かなかったと確信する」
   ◇
 影書房・2100円

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