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工学部ヒラノ教授の事件ファイル [著]今野浩

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2012年08月19日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■不正が頻発する土壌とは

 前著「工学部ヒラノ教授」で技術立国・日本を支える大学教授らの表の世界を書いた著者が、こんどは横領やパワハラ、セクハラのような犯罪まがいの裏の生態も描く。
 まじめで働き者の工学部の研究者たち。大きな悩みは慢性的な研究費不足だ。だからお金には渋く、弱い。ケガで海外出張に行けず、狭い公務員住宅に1週間隠れて旅費を着服したり、寄付金めあてに出来の悪い留学生に修士号も出したりする。
 不正を白状するヒラノ教授とはもちろん著者本人だ。「現役時代には書けなかった」というが、退職後にしてもここまで大学の実態を正直に告白した勇気はすごい。
 舞台は著者が歩んだ東京工大や筑波大、中央大、米パデュー大など有名大学ばかり。登場人物には仮名も混じるが「97%は真実」とか。
 新聞をにぎわす大学教授らの不正事件が頻発する土壌や、科学大国をめざす日本の最高学府のお寒い実情が、この本でよく分かる。
    ◇
新潮社・1575円

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