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家族進化論 [著]山極寿一

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)

[掲載]2012年08月19日

[ジャンル]人文 科学・生物

表紙画像

■霊長類の社会でいかに、なぜ

 気宇壮大な本である。霊長類研究の第一人者である著者が、日本における研究の蓄積や最新の成果を踏まえつつ、霊長類の社会における「家族」の萌芽(ほうが)について、食生活や性行動、育児の仕方などの観点から論じている。これが横軸とすれば、何百万年にもわたる猿と原人の進化の各段階が縦軸。家族の発生の過程に光を当てる。
 一口に猿といっても、生活環境によって生態もさまざまであり、生殖に関しても近親相姦(そうかん)を回避するものとそうでないもの、単独行動や乱婚やハーレム状態など、多種多様らしい。類人猿の授乳期間の長さや出産間隔の大きさに驚かされた。自分以外の雄が生ませた赤ん坊を殺してしまうゴリラの話や、群れに定着するために育児に参加するイクメン(イクザル?)の話も興味深い。コミュニケーション手段として言葉以前に音楽があったという指摘も印象的。
 家族制度が崩壊しかけている現代の人間社会にまで目配りのきいた内容の濃い一冊。
    ◇
東京大学出版会・3360円

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