小野寺史宜「転がる空に雨は降らない」書評 誰かに支えられることの強さ
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2012年08月26日
転がる空に雨は降らない
著者:小野寺 史宜
出版社:新潮社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784103325413
発売⽇:
サイズ: 20cm/248p
転がる空に雨は降らない [著]小野寺史宜
一つのキックが二つの家族を狂わせる。喪失から再起の兆しを描いた長編小説。
30代半ばを迎えたプロのサッカー選手、灰沢考人は控えのゴールキーパー。小学生の息子と広場でサッカーをしていて、灰沢の蹴ったボールが車道に飛び出してしまう。息子を失い、妻との関係は壊れ、練習に集中できず、引退の二文字が頭をよぎる。一方、車を運転していて加害者となった父の思いを胸に、高校生の砂田佳之也はユースからプロ選手を目指す。
自分を追い抜いてゆく後輩たちに実は支えられている灰沢、練習相手をしてあげた小学生に刺激される佳之也。誰かに支えられていることの強さが伝わってくる。
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新潮社・1575円