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韓国 民主化2.0 「二〇一三年体制」を構想する [著]白楽晴 [訳]青柳純一

[評者]姜尚中(東京大学教授・政治学、政治思想史)

[掲載]2012年08月26日

[ジャンル]政治 社会

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■分断体制をどう克服するのか

 竹島(韓国名・独島〈トクト〉)訪問や天皇陛下への謝罪要求など、韓国大統領の言動が波紋を投じているが、その歴史的かつ構造的な背景を知るためには韓国の置かれた分断体制を知ることが不可欠だ。
 本書は、まさしくその分断体制を韓国の民主化の進展とともに理解し、その克服に向けた包括的な指針を提示する、韓国の代表的な知識人による論文・講演集である。
 著者によれば、分断体制は、休戦協定によって定まり、軍事独裁に終止符を打った1987年の民主化勝利によって動揺期に入り、そして2000年の南北首脳会談による「6・15共同宣言」でその解体期に突入したことになる。
 だが、著者の見立てでは2000年以降も、韓国はまだ「民主化1.0」の段階に留(とど)まっていることになる。なぜなら、韓国内の民主化の深化と「朝鮮半島式統一」への展望との不可分な関係について広範な合意が成り立っていないからである。この場合の「朝鮮半島式統一」とは、武力統一型のベトナム式とも、吸収統一型ドイツ式とも、また内戦型のイエメン式とも異なる、朝鮮半島の分断体制の実情に即した漸進的変革と和解、協力による市民参加型統一を指し示している。
 この統一へのプロセスの現実的な担保になるのが、「6・15共同宣言」の第二項で合意された南北連合である。
 本書が主唱する韓国における「2013年体制」とは、このような分断体制の克服と連動する民主的な福祉体制としての市民社会の拡大強化を意味しており、「市民参加型統一」は、そのような民主化の進化と密接不可分に結びついているのである。著者が「民主化2.0」と呼ぶゆえんである。この民主化のバージョン・アップに向けて果たして今年末の大統領選挙で野党統一候補が勝利を収めるかどうか、予断を許さないが、韓国内のひとつの有力な論調として注目したい。
    ◇
岩波書店・3675円/ペク・ナクチョン ソウル大学名誉教授。邦訳書に『朝鮮半島の平和と統一』。

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