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『「語られないもの」としての朝鮮学校』書評 「民族」は力にもなれば抑圧にもなる

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年09月16日
「語られないもの」としての朝鮮学校 在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス 著者:宋 基燦 出版社:岩波書店 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784000258401
発売⽇:
サイズ: 20cm/255p

「語られないもの」としての朝鮮学校 [著]宋基燦(ソンギチャン)

 20代後半で初めて在日コリアンと出会った韓国人研究者が、接触すること自体が韓国の国内法に違反する恐れがある日本の朝鮮学校を、3年以上かけフィールドワークした。朝鮮学校といっても一枚岩ではない。「朝鮮学校の朝鮮語」に自分の言葉を合わせる韓国からの転校生。逆に韓国語にこだわる中国朝鮮族の生徒。結婚で日本籍から朝鮮籍に転じた母親は、朝鮮学校のありように抵抗感を隠さない。様々な場面を丁寧に描写する。
 「民族」は力にもなれば抑圧にもなる。生徒の多くは、学校を一歩出れば日本語を使い日本名を名乗る。著者はこれを「抜け道」「アイデンティティーの自己管理」として肯定的にみる。
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岩波書店・3255円