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またやぶけの夕焼け [著]高野秀行

[評者]

[掲載]2012年09月23日

[ジャンル]教育 文芸

表紙画像

 著者は『アヘン王国潜入記』などで知られる探検家。その原点を思わせる少年小説だ。小学4年生のヒデと幼なじみが、70年代、東京・八王子の田園を駆け回る。
 近所のドブ川の源流を求めて、コンクリートの用水路をさかのぼる。ノコギリクワガタを捕まえに、午前3時の夜と朝が入り交じった空気のなか自転車をこぐ。「いつもの場所」からほんの一歩踏み出しただけで、風景がまるで違って見える驚き。少年の胸の高鳴りまで、12の短編に閉じ込めた。
 野山では無敵の彼らも、教室では同級生が夢中になる少年野球の話題についていけない。住所と学区の食い違いで、チームに入れなかったのだ。「屈託は探検の母」と言いたくなる。
    ◇
集英社・1260円

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