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精神論ぬきの電力入門 [著]澤昭裕

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2012年09月23日

[ジャンル]社会

表紙画像

■実情を解説 あり方を問う

 原発事故のあと、エネルギー政策論議はある意味で自由度を失っている。「脱原発」の世論が一気に広がり、比較検討されるべき原発再稼働論は討論の場から排除された。だが国民生活の「インフラ中のインフラ」の電気は、どのような姿を理想とするにせよ、目の前の現実や生活と切り離して考えられはしない。
 本書は政策を熟知する元官僚の著者が、電力の実情をやさしく解説しつつ、そのあり方を問いかける入門書だ。そのために、さまざまな論点について読者に「不都合な真実」やデータもつきつける。
 例えば、電力会社間の競争を促せば料金は下がると言われる「発送電分離」や「電力自由化」。欧米での導入例ではむしろ値上がりした国が多い。まして電気が足りない現状の日本で導入すれば、間違いなく料金は上がるという。
 異論反論がある向きは著者に「精神論ぬき」で論戦を挑んでほしい。「いつでも受けて立つ」という気迫のこもった、内容の濃い新書だ。
    ◇
新潮新書・735円

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