中島たい子「LOVE&SYSTEMS」書評 近未来の極端な結婚政策
評者: 松永美穂
/ 朝⽇新聞掲載:2012年09月30日
LOVE&SYSTEMS
著者:中島 たい子
出版社:幻冬舎
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784344022294
発売⽇:
サイズ: 19cm/189p
LOVE&SYSTEMS [著]中島たい子
少子化と労働力不足の問題を解決するために、各国が極端な結婚政策を採り始めた、という設定の近未来小説。結婚制度そのものをなくしてしまって自由恋愛を認め、子どもは国の教育施設でまとめて育てるというF国。国の決めた相手としか結婚できず、女性には社会進出の道が与えられていないN国。移民に頼り、結婚する人が極端に減ってしまった国や、幸福度ナンバーワンを謳(うた)う幻の小国など、どこかで聞いたような気もするさまざまな国での人々の生き方が、明るいタッチで描かれている。
恋愛という、もっとも個人的なはずの営みが、システムにがんじがらめにされ、自由な思考や決断も妨げられてしまう。恐ろしい話だが、近未来に限らず過去や現在にも、こうしたことは多々あるのではないだろうか。
愛をめぐる制度について、小説の結末のロマンチックラブ(幻想?)をどう考えるかも含め、友人との議論の材料に絶好の一冊である。
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幻冬舎・1470円