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2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する [著]英「エコノミスト」編集部

[評者]原真人(本社編集委員)

[掲載]2012年10月07日

[ジャンル]社会

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■「未来」からみる「現在」の課題

 40年後の世界を言い当てることなど、当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦のたぐいだろう。だが、英エコノミスト誌のダニエル・フランクリン編集長によると「来週や来年を予測するよりたやすい」そうだ。構造変化に最も大きく影響する人口動態が、かなり高い精度で予測できるからという。
 本書は、日常的に膨大なデータから世界情勢を分析している同誌の執筆陣が、経済や科学、病気、環境などについて描いた40年後の世界だ。
 たとえばこんな具合に。
 ・高齢化と肥満化が世界の流れとなる。それに伴って途上国でがんや糖尿病が増える。
 ・経済成長を続ける新興国で宗教が弱体化する。
 ・世界中で製造業が縮小するが、サービス業が増大する。
 ・国際言語としての英語の一極集中は崩れない。ただしコンピューターによる翻訳能力が飛躍的に向上し、外国語学習はペン習字のように時代遅れになる。
 専門的で、鋭い理由づけもあるから、それなりに説得力もある。それでもこれは記者たちが書いたSF小説のようなものだ。額面通りに受け止めすぎるのは危険だ。
 と同時に、ないがしろにも出来ない。なにしろ同誌は世界中のエリートたちに最も読まれている国際政治経済誌なのだ。たとえSFであってもこれが標準的な世界観として広がらないとは限らない。
 40年後に予測された日本の姿は、超高齢化の末に影響力も豊かさも失った、並以下の国だ。勃興したアジア経済は世界経済の半分の規模を占めるまでになっている。日本はひとり存在感が薄い。1人当たり国内総生産(GDP)は韓国の半分になってしまう。
 いささか悲観的にすぎると思う。ただ、裏返せばそれが「現在」の日本が直面する課題ということなのだ。対策を怠れば、そういう「未来」がやってくるかもしれない。それを知るには、うってつけの教科書だと言える。
    ◇
東江一紀・峯村利哉訳、文芸春秋・1838円/「エコノミスト」は1843年に英国で創刊された週刊誌。

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