林真理子「アスクレピオスの愛人」書評 メディカルオフィサーめぐる人間模様
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2012年10月14日
アスクレピオスの愛人 (新潮文庫)
著者:林 真理子
出版社:新潮社
ジャンル:一般
ISBN: 9784101191232
発売⽇: 2015/01/28
サイズ: 16cm/485p
アスクレピオスの愛人 [著]林真理子
世界保健機関(WHO)の管理職、メディカルオフィサーの志帆子は、離婚した美容外科医との間に医学生の娘がいる。世界を舞台に激務をこなし、私生活ではやり手の大病院の理事長をはじめとする複数の男性と気ままな恋愛を楽しむ。物語は、彼女中心に進むのではなく、彼女をとりまく男性医師たちやその妻や愛人のさまざまな欲望や思惑によって転がっていく。とりわけ、志帆子の元夫の妻が何不自由なく暮らしていたのに40代になってどうしてもほしいと願ったものが、やがて思わぬ問題をもたらして……。アスクレピオスとはギリシャ神話の中の医術をつかさどる神。意外な展開の連続に引き込まれ、驚きの最終章でタイトルにうなずく。
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新潮社・1680円