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私の歌舞伎遍歴 ある劇評家の告白 [著]渡辺保

[評者]

[掲載]2012年10月14日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 妥協なき評者としてつとに知られた著者は76歳。評論家人生を振り返った本書を、幼いころから憧れながら、ついに見ることがかなわなかった美形・美声の15代市村羽左衛門(1945年没)を語ることから始めている。およそ歌舞伎を知ろうとする者なら、失われてしまった「芸」を夢見る力が必要なのではないか、と示唆するために。
 この命題は次章以降、保少年の心を震わせた“六代目”こと尾上菊五郎(49年没)の「豊潤さ」や、中村歌右衛門(2001年没)の年ふりて開いた「まことの花」を通して、おのずと証明されていく。強い思慕を支える確かな文体が、読者にも夢を見せてくれるのだ。名人芸の鋭さ、美しさがいま、そこにあるかのような。
    ◇
演劇出版社・2205円

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