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戦後日本の人身売買 [著]藤野豊

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2012年10月14日

[ジャンル]社会

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■実態と政治の対応たどる

 1948(昭和23)年12月3日の毎日新聞に「子供を売歩く男」という見出しの記事が載った。東京の上野駅に暮らす24歳の男が、10代前半の子供3人を栃木県の農家に売り込んでいた、と記事は伝えた。この記事をきっかけに、戦後、潜在していた人身売買が大きく社会問題化した。
 警察庁のまとめでは、54年に検挙した被疑者は5511人、被害者は8635人。このうち売春に関係のある人身売買が85%を占めた。
 本書は、冷害にあえぐ農村地帯や、不況下の炭鉱地帯などにみられた人身売買の実態を当時の新聞報道などから描き出し、これに政府や国会がどう対応したかをたどる。
 日本は人身売買に甘いという海外の批判を受けて、刑法に人身売買罪が新設されたのは、ようやく7年前のこと。国際的な売買組織によって外国人女性が日本に連れてこられる事件が今も後を絶たない。人身売買は政治の問題であり、現代日本の問題である、と著者は強調している。
    ◇
大月書店・4095円

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