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「和牛詐欺」書評 戦後最大の消費者被害事件

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年10月21日
和牛詐欺 人を騙す犯罪はなぜなくならないのか 著者:斉藤 友彦 出版社:講談社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784062179768
発売⽇:
サイズ: 19cm/236p

和牛詐欺 人を騙す犯罪はなぜなくならないのか [著]斉藤友彦

 マネー雑誌や節約雑誌には、長きにわたって「安愚楽牧場」の広告が掲載されていた。金融商品がリスキーなマネーゲームと化していく中で「安愚楽」のシステムは、懐かしい実体経済の色合いを残し異彩を放った。出資者は、実在の牧場で草をはむ母牛の飼い主となる。配当として牛肉が贈られるコースもあった。泥と草いきれの匂い。黒い巨躯(きょく)の手応えと体温。だが、その実体感こそが、負債総額4300億円、被害者7万人という戦後最大の消費者被害事件を生み出す基ともなった。
 共同通信記者の著者は「安全で有利」の看板の裏で金集めに追われた「安愚楽」の“虚業”ぶりを、さまざまな証言を集めてあぶり出していく。
    ◇
講談社・1365円