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ヒトはなぜ神を信じるのか 信仰する本能 [著]ジェシー・ベリング

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2012年10月28日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■神を論じる新世代の知性

 宗教書ではない。「神」を求める心理(進化心理学という語が用いられている)を解きほぐそうというのが著者の意図である。本文中に「私たちはヒトという種の歴史において、個人的な神を不必要で、ありえないものにする重大な科学的議論に初めて直面する世代である」との一節を見いだし、緊張させられる。
 1975年生まれのこの心理学研究者は、70年代後半からの学術用語「心の理論」をキーワードに文学、哲学、社会現象、歴史、さらには自らの周辺の人間像などを次々に語り続ける。神は人間心理のどのような状況のときにあらわれるのか、神の存在を納得させようとする自らの感情に抗する無神論者サルトルの生き方、進化論を説いたダーウィンが死の床で回心したと信じたがる人びと、傑出した哲学者や科学者の中に自然神学を支持する人がいることを「心の理論」で説く斬新さ、などの記述に魅(ひ)きつけられる。
 神を論じる新世代の知性に新たな地平が開けてくる。
    ◇
 鈴木光太郎訳、化学同人・2415円

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