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「琉球検事―封印された証言」書評 コザ事件と占領下の司法

評者: 上丸洋一 / 朝⽇新聞掲載:2012年11月04日
琉球検事 封印された証言 著者:七尾 和晃 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784492223260
発売⽇: 2012/09/01
サイズ: 20cm/211p

琉球検事‐封印された証言 [著]七尾和晃

 1970年12月20日未明、米軍統治が続く沖縄のコザ市(現沖縄市)で、米陸軍病院に勤務する米国人運転の車が日本人男性をはね、全治10日のけがを負わせた。この事故をきっかけに住民数千人が騒ぎ、車両82台が炎上、21人の逮捕者が出た。
 本書は、このコザ事件を軸に、占領下沖縄の刑事司法の実態に光を当てるノンフィクションだ。
 証言するのは、72年の本土復帰までの18年間、米国の指名を受けて琉球検察庁の検事長を務めた比嘉良仁と、比嘉のもとで公安部長検事を務めた高江洲歳満。コザ事件は「事前に綿密に計画されたものではないか」と高江洲らは考え、首謀者として、地元の有力政治家と新聞人に目をつける……。
 事件について、高江洲は、単に反米、反基地感情が表出されただけでなく、深い根のところに「大和に対する違和感と怒り」があったとみる。今日の沖縄を考えるうえでも一読をすすめたい一冊。
    ◇
 東洋経済新報社・1575円