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余華「ほんとうの中国の話をしよう」書評 天安門事件にも大胆に言及

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年11月11日
ほんとうの中国の話をしよう (河出文庫) 著者:余華 出版社:河出書房新社 ジャンル:一般

ISBN: 9784309464503
発売⽇: 2017/09/06
サイズ: 15cm/283p

■ほんとうの中国の話をしよう [著]余華

 中国を代表する作家の一人が著した出色の中国文化論。10のキーワードで社会を読みとく。たとえば山寨(シャンチャイ)。もともと山奥の防御用建造物をさすが、今は政府の管轄をはずれたものも意味する。コピー文化全盛の中国で山寨は、模倣という概念に偽造や不正規、悪ふざけといった多様な意味を付与する。この言葉をかぶせれば、コピー版や海賊版も社会心理において合法的、合理的なものに化すという。
 著者は身に覚えのないインタビュー記事を新聞で読み、でっち上げた記者を詰問したら、「山寨版のインタビュー」と答えが返ってきたそうだ。タブーとされる天安門事件にも大胆に言及し、中国本土では未刊行。
    ◇
 飯塚容訳、河出書房新社・2310円