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かっこうの親 もずの子ども [著]椰月美智子

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2012年11月11日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■生命の輝き包む 子育ての日々

 語り手の統子は、夫でない男性の精子で授精するAID(非配偶者間人工授精)で子を授かった。夫は無精子症で合意の上だったが、気持ちのすれ違いから離婚、ひとり親で4歳の息子を育てている。と書くと複雑な背景を持つ母子物語と響くかもしれないが、むしろ子育ての細部を掬(すく)い上げることで、すっと背筋の伸びた作品に仕上がっている。
 「子どもを持った瞬間から、世の中は怖いものだらけになってしまった」と統子は独白する。まさにそれ! と子育てを「第一責任者」として経験した者なら膝(ひざ)を打つだろう。子のために強くもなり、同時に追い詰められもする。おさなごのいる日々は、様々な価値観に翻弄(ほんろう)されつつ、待ったなしの要求に、心身を引き裂かれることの連続だ。
 ある理由から統子が息子と訪れる五島列島の景観、心象風景が心に残る。際限ないようで限りある黄金の日々を通じ、我々は宇宙を、生命の輝きを、掌(てのひら)に包み込んでいると感じさせられる。
    ◇
 実業之日本社・1680円


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