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北斗―ある殺人者の回心 [著]石田衣良

[評者]

[掲載]2012年11月25日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 寒空の下で北斗少年がふと抱きついた自動販売機は、自分への虐待を繰り返す両親より温かい。何という心の極北だろう。長じて救い出された彼は、初めて愛してくれた里親を失意のまま死なせた男を殺すと決意する。しかし成り行きから、別のふたりを手にかけてしまう。罪なくして未来を断たれた犠牲者とは別に、ほんとうの被害者は誰かという問いが、物語の底流に横たわる。繰り返し描かれるのは、純粋なものの恐ろしさだ。抜き身のように研ぎ澄まされた心がかち合うところに、恐怖と暴力が扉を開く。だが、曇りがないからこそ、光をあてれば曲がらずに届くこともあるかもしれない。そのことへのかすかな期待が余韻を残す。
    ◇
 集英社・1890円

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