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クラウドクラスターを愛する方法 [著]窪美澄

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)

[掲載]2012年11月25日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■心から「家族」と思える人求め

 両親が不仲だったり、片親が出ていったりした家庭を子どもの視点から描いた小説二編。逃げ場も相談相手もなしにそうした問題を乗り越えていかなくてはならない思春期の子どもたちの、切なさ、辛さ。大人になってからもトラウマを断ち切れず、思い切って人を愛することができなかったりする。
 たとえば表題作は、三十歳を目前にした若い女性の大晦日(おおみそか)から一月三日までを描いている。年末年始はふだん離れて暮らしている家族が久しぶりに集まる時期だが、主人公には心から「家族」と思える人がいない。「もうすぐ三十歳になるのに、私は今も母が家を出ていった十二歳のときのまんまだ」と感じる彼女の、人生を振り返る四日間が、温かく柔らかな筆致で、丁寧に描かれている。さりげなさそうで緻密(ちみつ)な構成になっていて、何げない食事の風景や会話にも、人と人の微妙な距離感がうまく出ている。完結しているけれど、続きが読みたくなる小説だ。
    ◇
 朝日新聞出版・1260円

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