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ホームレス障害者 彼らを路上に追いやるもの [著]鈴木文治

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2012年12月02日

[ジャンル]社会

表紙画像

■「排除」の原理に希望の風穴

 著者は、川崎市にある日本基督教団桜本教会の伝道師である。盲学校、養護学校の校長を務めた障害児教育の専門家でもある。ホームレスの人々や障害者と「共に生きる」とは、どう生きることか。本書に多くのことを学んだ。
 桜本教会がホームレスの人々への支援を始めたのは1994年。当初は住民の反対運動や嫌がらせにあったが、少しずつ理解が広がった。翌年からは週2回、食事や衣類、日用品の提供を始めた。
 そうした活動の当初から、著者は、ホームレスの人々の中に、障害者が多くいることに気づいていたという。
 若者のバイクにはねられ、72歳で亡くなった「クニさん」は、難聴で知的障害があった。「神様ありがとうございます。アーメン」の祈りの言葉を発することも難しかった。教会では下足番をつとめ、笑顔を絶やさなかった。
 「タクマくん」は29歳。相手の話は理解するが、自分から話すことはない。養護学校を卒業後、作業所に10年ほど通ったが行方不明に。1年後、多摩川で水死体となって見つかった。
 どうして彼らはホームレスとなったのか。何が彼らを路上へと追いやったのか。
 著者は「本人というより周りの支え方に問題がある」と述べている。
 「共生」とか「共生社会」といった言葉が使われるようになってすでに久しい。
 しかし、現実はどうか。
 障害者が路上での暮らしを余儀なくされていること自体、「共生」の対極にある「排除」の原理がなお、社会を支配していることを示している。
 本書は、その厳しい現実を描きながら、同時に、その現実に希望の風穴をあけてくれる。著者はこう書いている。
 「桜本教会は(略)単なる支援活動ではなく、『共に生きる営み』だからこそ、20年を経て今日まで継続しているのである」
    ◇
 日本評論社・1890円/すずき・ふみはる 48年生まれ。田園調布学園大教授。『幸いなるかな、悲しむ者』など。

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