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「日高六郎・95歳のポルトレ」書評 体内をくぐって現れる戦後史

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年12月09日
日高六郎・95歳のポルトレ 対話をとおして 著者:日高 六郎 出版社:新宿書房 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784880084343
発売⽇:
サイズ: 20cm/227p

日高六郎・95歳のポルトレ 対話をとおして [著]黒川創

 ロシア革命の年に中国・青島で生まれた日高六郎は、戦争中の東大で文学部助手になった。自分を「学者では絶対にない」と定義し、1969年、東大への機動隊導入時には抗議して、東大教授を辞職。一貫してリベラルな知識人として行動し、ブレることがない。しかし、周囲の状況はなんと大きく変わったことか。30年来の知己である著者に聞かれるまま来し方を語り、「戦前、戦後を見てきた」人間の、「体内をくぐって現れる戦後史」に照らせば、いまの日本の「この足取りは、戦前の一九三一年前後とかなり似ている」と危機感も語る。日高六郎の名を懐かしく思うだけでなく、その発言や認識で、改めて自分の足元を見直したい。
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 新宿書房・2310円