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領土問題をどう解決するか 対立から対話へ [著]和田春樹

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2012年12月09日

[ジャンル]政治 新書 国際

表紙画像

■交渉を軸に相手の主張も聞く

 著者が本書で企図したことは3点に絞られる。現状の三つの領土問題(北方四島、竹島、尖閣諸島)解決には外交交渉を主軸に相互が軍事力を使わぬこと、領土に関するそれぞれの国との関係文書を改めて精査し、「固有の領土」とだけ主張する日本の論理に無理や矛盾がないかを確認すること、同時に相手国の言い分にも謙虚に耳を傾けること。この3点を土台に据えての主張と結論が提示されている。
 専門はロシア・ソ連史と現代朝鮮研究だが、本書の8割は北方四島問題の記述である。歴史的経緯、日ソ交渉の個別の内容などを丹念に追いつつ、具体的な解決策へ外交文書の確認、問題となる島の島民の現状保持、海底資源の調和的利用を示す。著者は国後、択捉は日本が放棄した「千島列島」に入っていると言うが、択捉を除く三島の引き渡し要求を提案する。竹島領有も主張できないという論理は国民的理解にはなりにくいと思うが、こうした分析を含めての論議の多様さが必要であろう。
    ◇
 平凡社新書・840円

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