いがらしみきお「ものみな過去にありて」書評 1年前の断言に驚き
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年01月06日
ものみな過去にありて (仙台文庫)
著者:いがらし みきお
出版社:メディアデザイン
ジャンル:マンガ評論・読み物
ISBN: 9784904184530
発売⽇:
サイズ: 18cm/222p
ものみな過去にありて [著]いがらしみきお
『かむろば村へ』『I(アイ)』『羊の木』と、このところ話題作を連発している仙台市在住のマンガ家の、日記形式による自伝的エッセー集。過ぎ去った時への甘やかで切ない「あの感じ」がつづられる。
意外に東京が好きなこと。パソコン熱はもう冷めたこと。「馬の骨」というパンクバンドをやっていたこと。映画「かいじゅうたちのいるところ」を見て泣いたこと。それらが3・11で「現在」へと暗転する。妻の実家からの帰路、車窓の風景を眺めては「こんな幸せいつまでつづくかなぁ」と、いつも思ったという述懐が心に残る。2010年3月11日の題が「大地震」で「ある日突然来る」と1年前に断言していることにもギョッとした。
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仙台文庫・987円