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「記念碑に刻まれたドイツ」書評 共同体の記憶として何を残すか

評者: 松永美穂 / 朝⽇新聞掲載:2013年01月06日
記念碑に刻まれたドイツ 戦争・革命・統一 著者:松本 彰 出版社:東京大学出版会 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784130210751
発売⽇:
サイズ: 22cm/292,61p 図版16p

記念碑に刻まれたドイツ―戦争・革命・統一 [著]松本彰

 こつこつと自分の足で地道に歩いて調査し、記録したドイツとオーストリアの記念碑の数々。記念碑のカタログのようなたくさんの写真にまずは脱帽である。本書は記念碑という、わかりやすく目に見える建造物のあり方から、国家や地域社会が何を共同体の記憶として残そうとしているかを探る試みである。
 ベルリンの壁崩壊後に旧東独地域でマルクスやレーニンの像が撤去されたり、通りや橋や広場の名前が変えられたりしたことは記憶に新しい。逆に、新しい記念碑もたくさん造られた。国家主導で記念碑が造られた時代を経て、現在は記念碑についての議論はより開かれたものとなっている。
 自分たちは歴史とどう向き合おうとしているのか。本書はドイツ語圏のあり方を紹介するもので、日本との比較の視点があるわけではないが、一昨年の震災以降、地域に残すべきモニュメントが話題になっているなかで、ヒントとなり得る一冊である。
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 東京大学出版会・6720円