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ゾンビ襲来―国際政治理論で、その日に備える [著]ダニエル・ドレズナー

[評者]山形浩生(評論家)

[掲載]2013年01月13日

[ジャンル]社会

表紙画像

■死霊への対処、大まじめに考察

 従来の人間ゾンビ関係は、殺(や)るか殺られる(食われる)かの単調な理解を超えるものではなかった。本書は既存ゾンビ資料の徹底的な分析からくる深い知見をもとに、深みのある人間ゾンビ関係理解に先鞭(せんべん)をつけた快著だ。リアリズム、リベラリズム、ネオコン、社会的構成主義など、国際関係論の各種立場を使うことで、ゾンビ襲来への対処法は驚くほど明確になる。人間じゃないし遠慮なく蹂躙(じゅうりん)しろという立場、生死を問わずそこにいるという事実を重視する立場等々。そしてその分析が逆に、それぞれの理論の特徴やゆがみをも浮き彫りにしてくれるという余禄もある。
 むろん、各種立場のどれを採用するかはあなた次第。だがゾンビ襲来の日に備え、物理的な武装に加え本書で理論武装もしておけば、対ゾンビ交渉も実り多いものとなろう。さらに知的遊戯として、各種枠組みをゾンビならぬ人間に適用してみるのも高度な読者には一興。この実用性と遊び心の共存も本書の魅力だ。
    ◇
 谷口功一・山田高敬訳、白水社・2100円

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