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居場所を探して 累犯障害者たち [著]長崎新聞社・累犯障害者問題取材班

[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)

[掲載]2013年01月27日

[ジャンル]社会

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■孤立と困窮の連鎖を断ち切る

 知的・精神障害がありながら福祉の支援を受けられず、結果的に犯罪を繰り返す「累犯障害者」。服役中の知的障害者の7割が再犯者で、3人に1人は出所後3カ月以内に再び罪を犯すという。『長崎新聞』の連載はこの問題にスポットライトを当て、2012年度新聞協会賞を受賞した。
 累犯障害者は出所後、孤立と生活困窮に苦しむ。冷たい地元、追いつめられる家族。受け入れ先となる福祉施設は少なく、結果として再び犯罪に手を出す。
 累犯障害者への偏見は根強い。福祉の現場では「扱いにくい人」を避ける「選別」が存在する。行き場を失った累犯障害者は、福祉に接続できなかった「責任」や「報い」を背負わされる。
 時に障害は見えにくい。高次脳機能障害は、その人の性格に還元され、「変な人」「怠け者」と誤解される。周りから非難され、突き放される。疎外された彼らは路頭に迷い、また刑務所に戻ってくる。
 この負の連鎖をいかに断ち切るのか。罰だけで更生につながるのか。
 長崎では、累犯障害者を支援する取り組みがスタート。福祉施設で生活習慣や人間関係を構築し、再犯防止に努める。支援を出所後だけでなく、検察や裁判所の段階から強化する。裁判所には執行猶予を求め、福祉施設での更生を目指す。取り調べには、福祉の専門家が立ち会う。この「長崎モデル」は、累犯障害者に居場所を作る試みとして、注目を集めている。
 国のあり方は、弱い立場の人への施策に典型的に表れる。日本は、あらゆる領域で「長崎モデル」を応用すべきだろう。人間のアイデンティティーは、誰かに必要とされているという実感によって支えられる。実存の底が抜けた社会で、新しい居場所を作ろうとする試みこそ、拡大すべきだ。
 長崎を抱きしめたい。
    ◇
 長崎新聞社・1680円/11年7月から12年6月まで掲載した連載を収録。12年度新聞協会賞受賞。

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