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百人一首で読み解く平安時代 [著]吉海直人

[評者]逢坂剛(作家)

[掲載]2013年02月10日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■選ばれた理由の分析に説得力

 百人一首といえば、とかく反射神経を競う早取り競技、という印象が強い。評者も学生時代、それにのめり込んだ口だが、歌そのものにも関心があって、研究書を読みあさったものだった。
 本書は、歌の解釈もさることながら、詠者の複雑な出自や人間関係、彼らが生きた時代背景を活写して、すこぶる刺激的だ。著者独自の解釈に加えて、古今の研究書や解釈本にも目を配り、出典を明示してそれぞれの異説を、ていねいに紹介する。その、誠実な博捜ぶりが、快い。
 ことに、他の勅撰(ちょくせん)集への収載状況を精査して、なぜ当該歌が百首の中に選ばれたかを検証する、分析の過程が読みどころだろう。選者藤原定家が、自身の歌の好みだけでなく、いわゆる〈平安朝史観〉に基づいて、詠者の出自や親子関係、男女関係、政治的なしがらみなどから、総合的に判断して百首を選んだ、との指摘には説得力がある。
 平安時代を、和歌を通して描き出した、好著である。
    ◇
 角川選書・1890円

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