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革命の季節―パレスチナの戦場から [著]重信房子/オウム事件 17年目の告白 [著]上祐史浩

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2013年02月17日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■空虚さ漂う自省、歴史の歪み続く

 1960年代後半から70年代にかけての学生運動、80年代から90年代の宗教活動。その二つの世代の異様に特化した組織の幹部執筆の書、それが相次いで刊行された。学生運動の尖端(せんたん)で国際根拠地建設のもと世界革命を呼号した日本赤軍、超能力者を自称する人物に帰依してサリン散布で大量殺人を企図したオウム真理教、革命と宗教、そこに特別の共通点がないかに思えるが、実はそうではない。
 彼らは既存の体制、思想、規範、さらには価値観を解体するにはあらゆる手段が許容されると考える。ある一面に並外れた感性を持つが、その半面に冷酷な計算が見え隠れしている。この共通点がいみじくも両書の各頁(ページ)から窺(うかが)える。同時にそれぞれの運動の指導部に列していたがゆえに、史実への自省、自戒もまた記述されている。が、そこに空虚さが漂っているのも否めない。
 重信書は、自らがなぜ学生運動に飛びこんだか、赤軍に加わり、やがてレバノン、そしてパレスチナに向かうが、その間の日常を淡々と記述する。とくにポイントを置いて明かしているのは、テルアビブ空港での3人の日本人学生による乱射事件である。著者は、この事件をリッダ闘争と称し、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)の闘争の一環としてどのように行われたかを詳細に説明している。奥平剛士の動きを中心に安田安之やその周辺で動く日本人学生たちの意識や言動を知ると、戦後日本社会の多数派とは異質の価値観をもっていたことがわかる。
 重信書によると、奥平の両親への遺書を託されたというが、特攻隊員に通じる心理の機微に驚かされる。著者が巧妙にヒューマニズムを鼓吹していることに気づくと、初歩的な疑問(テルアビブ空港で亡くなった24人への哀悼の欠落)が大きくなってくる。表面上は謝罪するとの言もあるが、「パレスチナの受難の歴史と70年代という時代の中でその問題を捉(とら)えたい」というのは、はたして説得力を持ちうるのか。
 上祐書はオウムが起こした各種事件をすべて自己批判、サリン事件は、麻原の予言的中演出のために強行されたとの自説を披瀝(ひれき)する。「麻原は極度の誇大妄想と被害妄想の人格障害(精神病理)だった」との断言にあるように、いわば憑(つ)きものが落ちての自己省察の書である。なぜ麻原に魅(ひ)かれたか、私はオウム人だった、の分析で語り続ける。ただオウムは大日本帝国やナチスと共通点があるとの分析がくり返されるが、一面的、皮相的であることは否めない。
 二つの世代体験者が記憶する同時代の史実、両書にふれても未解明のままだが、歴史の歪(ひず)みの連続性だけは見てとれる。
    ◇
 『革命』幻冬舎・1785円/しげのぶ・ふさこ 45年生まれ。元日本赤軍最高幹部。殺人未遂などの罪で服役中。『オウム』扶桑社・1680円/じょうゆう・ふみひろ 62年生まれ。オウム真理教を経てアレフ代表。脱会後、「ひかりの輪」代表。巻末に有田芳生氏との検証対談。

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