1. HOME
  2. 書評
  3. 加藤典洋「ふたつの講演―戦後思想の射程について」書評 ゼロからはじめ、世界に向きあう

加藤典洋「ふたつの講演―戦後思想の射程について」書評 ゼロからはじめ、世界に向きあう

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2013年02月17日
ふたつの講演 戦後思想の射程について 著者:加藤 典洋 出版社:岩波書店 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理

ISBN: 9784000246781
発売⽇:
サイズ: 20cm/40,164p

ふたつの講演―戦後思想の射程について [著]加藤典洋

 鶴見俊輔や吉本隆明らの「戦後思想」は圧倒的な外来思想への抵抗だった。それを受け継ぎ、その先に出るには、「戦後」がなくても善悪を考えられる足場を築くことだ。9・11は「戦後」でなく「世界」という枠で考える必要を感じさせ、3・11で世界は、資源や環境の「有限性」から考えなければならない「リスク近代」に入った——。

『敗戦後論』などで過去とのつながりを考えてきた著者が、未来とのつながりも考えるようになった。その道筋が大まかに描かれている。ゼロからはじめ、世界に向きあうこと。「いま、私は、何か小学一年生のような言い方になってしまうのですが、世界のことを考えたいと思っています」という文が印象的だ。
    ◇
 岩波書店・1785円