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政治的思考 [著]杉田敦

[評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学)

[掲載]2013年02月17日

[ジャンル]政治

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■平易な文体、炯眼に満ちた言葉

 巷(ちまた)に溢(あふ)れる政治の時局解説とは百八十度趣を異にする一冊。具体的な政党や人名は一切登場しない。目先の政策提言ともまるで無縁だ。あくまで〈政治〉の原点に私たちを誘い直すことに著者の想(おも)いはある。
 「直接投票も一種の代表制なのではないか」「薄っぺらな現実主義は、現実そのものによって復讐(ふくしゅう)される」「私たちが政治から逃げたからと言って、政治は私たちを逃がしはしない」……。文体は極めて平易ながら、炯眼(けいがん)に満ちた言葉を読後も何度も反芻(はんすう)した。
 「新しい憲法さえあれば、すべてうまくいく」と期待するのは「政治という営みの特質をふまえていない考え方」と保守派を牽制(けんせい)しつつ、国家と市場を過度に敵対視しがちなリベラル派への違和感も隠さない。冷静沈着な思考展開が説得力を増す。
 「政治」と聞くと条件反射的に持論を披露し始める方々にはとりわけ一読をお薦めする。永らく読み続けられるであろう良書だ。
    ◇
 岩波新書・756円

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