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ホテルローヤル [著]桜木紫乃

[評者]

[掲載]2013年03月17日

表紙画像

 湿原のそばにたたずむ、廃虚となったラブホテル。ホテルの誕生からつぶれるまで、時間をさかのぼりながら、この場所を通り過ぎてゆく人々を描いた連作短編集。「夢と希望」が口癖でねじれた虚栄心を押しつけてくる恋人に、急に冷めてゆく美幸。生活苦を押して、働きづめの夫を誘い、ふらりと入った部屋で新たな決断に踏み出す恵。「なにがあっても働け」という母の教えを一心に守ってきたホテルの掃除係ミコ。北の大地の重い空気が覆う。男女の性を描きながら、地方で生きる者たちの、生命力に満ちた静かな一瞬を切りとった、爽やかさがあとに残る。たくましい女、ふがいない男、どちらもいとおしい。
    ◇
 集英社・1470円


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