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統計学が最強の学問である―データ社会を生き抜くための武器と教養 [著]西内啓

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年03月17日

表紙画像

■最速で最善の答えを出すために

 挑発的なタイトル。統計学を「最強の武器」と位置づける。「どんな分野においてもデータを集めて最速で最善の答えを出すことができるから」と。一方、広告会社がプレゼンに使うような「統計」はむしろうさんくさく見えることがある。「しょせん統計」と我々は言いがちかもしれない。当てにならないという意味で言及されるわけだが、実際の統計学は「どの程度当てにならないか」自ら述べる力がある。そして、今、研究の諸分野、政策立案の諸分野、経営判断の場でも、必須の知識と方法になっている。これを知らずにいると、個々人の問題としては確実に損をする。著者に言わせれば「合法的な詐欺の被害者になっても文句は言えない」。
 本書では、まず伝統的で実践的な応用分野、疫学や公衆衛生施策を導入部に使う。そこから先、様々な例が語られるが、IT分野での「ビッグデータ」の流行と、最近よく行われているA/Bテストのエピソードが印象的だ。ビッグデータを「ビッグ」なままコンピューターで扱いえる現代だが、何が知りたいかを明確にすればスモールデータを適切に集めた方がよい場合が多いと釘を刺す。ウェブの広告バナーなど、どのデザインが多くクリックされるか実験しながら最適なものを選ぶA/Bテストは「ランダム化比較実験」と同等の優れた手法だが、誤差を考慮しないと判断を誤りかねない……。
 本書の後半は統計学入門的な内容が増えるが、統計学の威力とその及ぶ範囲を素描した前半について、評者は中高生に読んでほしいと思う。さらに読み進むなら『統計学を拓(ひら)いた異才たち』(デイヴィッド・サルツブルグ著、日経ビジネス人文庫)、『その数学が戦略を決める』(イアン・エアーズ著、文春文庫)、『市民のための疫学入門』(津田敏秀著、緑風出版)など。実務としての必要を痛感した向きは、数ある教科書的入門書に進むべし。
    ◇
 ダイヤモンド社・1680円/にしうち・ひろむ 81年生まれ。著書に『世界一やさしくわかる医療統計』など。

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