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中国の強国構想 日清戦争後から現代まで [著]劉傑

[評者]渡辺靖(慶応大学教授・文化人類学)

[掲載]2013年03月17日

[ジャンル]国際

表紙画像

■論争から自己認識の変容活写

 北京で生まれ、東大に学び、現在、早大で教鞭(きょうべん)を取る著者は、冷静かつ公平な日中関係史の研究で定評がある。
 第一次安倍内閣で「日中友好」から「戦略的互恵関係」へと再定義された日中関係だが、目下、国交正常化以来、最悪の状況にある。しかし、著者によれば、江戸時代以来の400年間のうち、関係が平穏だったのはせいぜい正常化直後の20年間程度だという。
 日清戦争での敗北以後、強国の再建を夢見た近代の中国にあって「日本」は常にその自画像や国家構想を揺さぶる存在だった。
 著者は義和団事件や辛亥革命、汪兆銘や蒋介石をめぐる中国国内の論争を手掛かりに、その自己認識と歴史認識の変容を活写する。特に「普遍的価値」と「中国モデル」をめぐる論争が面白い。
 こうした他者への内在的理解を欠くとき「如何(いか)なる外交策も誤解の温床になり得る」のだろう。
 1930年代と酷似しつつある日中対立への警鐘としたい。
    ◇
 筑摩選書・1680円

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