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3・11とメディア―徹底検証 新聞・テレビ・WEBは何をどう伝えたか [著]山田健太

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2013年03月24日

[ジャンル]社会

表紙画像

■報道姿勢に反省はあるのか

 東京電力福島第一原発の1号機が水素爆発を起こした直後、在京のあるテレビ局は「爆発弁というものを使った意図的な作業」だと伝えた(「デイズ・ジャパン増刊号 検証・原発事故報道」)。「爆発弁」とは何か? 当のテレビ局が釈明なり訂正なりをしたとは聞かない。
 昨夏、脱原発を訴える首相官邸前のデモを取材中に、一枚のビラを手渡された。「全国紙不買のすすめ」と題したそのビラは朝日、毎日、読売などの全国紙を「政府の宣伝局」と批判していた。
 原発事故報道で噴出したメディア批判。しかも「少なからぬ大メディアは……反省どころか自らの取材・報道姿勢を肯定しているように見える」と著者は指摘する。
 〈3・11〉に際し、新聞(全国紙、地方紙、地域紙)、放送(テレビ、ラジオ)、雑誌、ネットメディアはどんな役割を果たしたのか。新聞、テレビなどの「伝統メディア」とインターネットなどの「新興メディア」の間にどんな連携があったのか。
 本書は、これらを具体的に検証し、問題の所在と今後への教訓を市民の視点から明らかにする。
 問題点の一つとして著者は「(政府や東電などの)意思決定過程の不透明性・正当(正統)性についての追及不足」をあげる。例えば、食品の安全基準は「どこでどのような議論を経て決まったのかの報道が不十分」だったと。
 その背景に「民間情報や海外情報より、日本国政府の発表や決定を相対的に上位におく体質と、官邸・官僚への絶対的な信頼感」があると著者はみる。伝統メディアが信頼をおく官製情報に、人々は首をかしげた。その落差が不信や批判となってメディアにはね返ってきた……。
 メディアにとって本書は、自己検証のためのよりどころとなろう。メディアに不信を抱く方々にも、お薦めしたい一冊だ。
    ◇
 トランスビュー・2100円/やまだ・けんた 59年生まれ。専修大教授(言論法、ジャーナリズム論)。『言論の自由』

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