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誰がJ‐POPを救えるか?―マスコミが語れない業界盛衰記 [著]麻生香太郎

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2013年03月24日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■「ボカロ」が育む新しい世代

 60年代生まれの評者が物心ついた頃、流行歌とは歌謡曲だった。思春期に出会ったニューミュージックは衝撃的で、後にJ—POPと呼ばれる分野へ発展した。いわゆる洋楽と違い、我々の気持ちに徹底的に寄り添う楽曲にどれだけ勇気づけられただろう。
 それが今や壊滅状態という。共通話題になるのはAKB48くらいで裾野が狭い。その背景を、エンタテインメント業界誌編集者が主人公のフィクションの体裁を取りつつも、率直かつディープに語る。
 衰退の要因は複雑に絡まっているようだ。ウォークマンなどで若者文化を支えてきたはずのソニーが「ユーザー目線」を忘れ、アップル社iTunesの音楽配信に「敗北」した経緯。音楽番組、ドラマ主題歌のタイアップがテレビとの過剰な癒着を呼び自壊した過程。今の音楽は「音楽映像を核としたサウンドの塊」と割り切るK—POPの台頭。音楽産業が「権利」にこだわるあまり「縛り」をきつくしている現状など。
 では誰がこの状況を救えるのか。回答は「平成10年代生まれ」。動画サイトを享受しつつ成長し、ボーカロイド(サンプリングされた声から歌声を合成する技術)で楽曲を作る世代だ。昨年度ネットにアップされたボカロ曲は3万以上にも及び1曲で数百万回の再生も珍しくない。新しい音楽の孵化(ふか)器として無視できないはずだが、音楽業界やマスコミは過小評価しているという。
 主役は「若者」としても、年長者には重要な役がある。「世代間の引き継ぎ」「感動の伝言ゲーム」だ。小説でも映画でも音楽でも、自らの若き日の感動を伝えていくこと。それがやがて社会規範や正義や思いやりといった事々すら伝える最強のメソッドだとも論じる。結語で「エンタテインメントだけが地球を救う」と述べる時、業界盛衰史を超えたエンタテインメントの普遍的な役割に思いをはせる。
    ◇
 朝日新聞出版・1575円/あそう・こうたろう 評論家、作詞家。「日経エンタテインメント!」創刊メンバー。

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