書評・最新書評

死と神秘と夢のボーダーランド―死ぬとき、脳はなにを感じるか [著]ケヴィン・ネルソン

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2013年03月24日

[ジャンル]医学・福祉

表紙画像

■脳が引き起こす臨死体験

 「死ぬとき、脳はなにを感じるか」という副題に惹(ひ)かれた。臨死体験を多く扱っているが、怪しい本ではない。著者は脳神経科学者で、本書はかなりしっかりした研究書である。
 結論から言うと、臨死体験は全て脳によって引き起こされる。たとえば体外離脱は、脳の右側頭葉の刺激で簡単に起こることが実験で明らかになっている。普段は統合されている体の感覚が断片化されると、意識は視覚の記憶に頼って周囲に見えるものに自らを投影するのだという。
 神の観念は、右脳の体験を左脳で解釈することで現れたと仮説している。意識がなくとも脳は活動しているらしい。脳の活動の大半は意識の届かないところに隠されている。霊的体験とは、意識不明でありながら、脳が周りのことを分かっている状態であるという。ちなみに、本当の脳死とは一千億個の脳細胞が全て破裂して死に絶えたときで、その厳密な瞬間は、実は特定できないそうだ。
    ◇
 小松淳子訳、インターシフト・2415円

関連記事

ページトップへ戻る