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危機の憲法学 [著]奥平康弘 [編]樋口陽一

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2013年03月31日

[ジャンル]政治

表紙画像

■憲法の対応力を理論的に検討

 東日本大震災の発生から2カ月近くたった5月3日の憲法記念日、東京都内で開かれた改憲派の集会に出向いた。そこで何が語られるか、聞いておきたかったからだ。
 「自衛隊の災害援助活動は憲法に規定されていない。憲法九条を改正して、国防軍がその任にあたることを明確にすべきだ」
 高名な学者が講演した。
 確かに憲法にそうした規定はない(そもそも自衛隊を直接、規定する条文がない)。しかし、自衛隊法が災害援助活動を規定している。改憲の必要がどこにあるのか、首をかしげた覚えがある。
 現行憲法では、今度の大震災・原発事故のような危機に対応できない、という主張がある。本当にそうなのか。
 本書は「『危機』における憲法の対応力を理論的に検討」することをテーマに、憲法学者14人の論文を収録。〈3・11〉後の政治、社会を憲法学の窓から考察する。
 民主党政権下、大飯原発(福井県)の再稼働を協議した関係閣僚会議は、議事録を作成しなかった。第3章では、この点を軸に、政府の意思決定と政治家の責任について考える(蟻川恒正執筆)。
 また第12章では、被災者の避難行動と避難生活を憲法に照らして分析。原発事故に際しての政府の避難指示は「あまりに住民の生命、身体の安全を軽視した粗雑にすぎるもの」であり、「法的責任を問われてしかるべきもの」と指摘する(葛西まゆこ執筆)。
 ほかに、愛敬浩二「国家緊急権論と立憲主義」、鈴木秀美「原子力災害と知る権利」などの論文を収める。
 憲法が掲げる理念は、なお実現の途上にあることを本書は語る。ただし、専門性が高く、全体にかなり難解だ。
 一般向けには森英樹ほか編著『3・11と憲法』(日本評論社)などがある。折しも、前回衆院選を違憲、無効とする司法判断が続いた。今こそ憲法に向き合う時だ。
    ◇
 弘文堂・4305円/おくだいら・やすひろ 東京大名誉教授。ひぐち・よういち 東北大・東京大名誉教授。

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