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「プレジデント・クラブ」書評 権力者の駆け引きや嫉妬活写

評者: 渡辺靖 / 朝⽇新聞掲載:2013年03月31日
プレジデント・クラブ 元大統領だけの秘密組織 著者:ナンシー・ギブス 出版社:柏書房 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784760142200
発売⽇:
サイズ: 20cm/805p 図版16p

プレジデント・クラブ―元大統領だけの秘密組織 [著]ナンシー・ギブス、マイケル・ダフィー

 どんな組織や役職であれ前任者との距離の取り方は悩ましい。頼りになることもあれば、疎ましいこともある。こと米大統領という権力者間の関係となればなおさらだ。
 本書はタイム誌のベテラン記者が第2次大戦後のホワイトハウスの館主間の友情や嫉妬、駆け引きなどを活写した秀逸なルポである。
 ニクソンとレーガン、クリントンとカーターはそれぞれ同じ政党ながら関係はなかなか複雑。かたや、党こそ違え、クリントンは深夜の電話でニクソンに外交政策の助言を仰ぎ、大統領選を争った父ブッシュとは今でも深い絆で結ばれているという。オバマと存命する歴代大統領4人との関係も面白い。
 こうした権力の中枢の、そのまた舞台裏となると、日本の特派員や学者は到底うかがい知る術がない。イデオロギー対立とは別次元の政治的回路があることがよくわかる。
 米政治に疎くても、人間ドラマとして一気に引き込まれるだろう。
    ◇
 横山啓明訳、柏書房・2940円