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聞き書き 倉本聰 ドラマ人生 [編]北海道新聞社

[評者]出久根達郎(作家)

[掲載]2013年04月07日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■包んであるのは人生の「苦い薬」

 電気が無いと暮らせない、と少年が父親に訴える。夜になったらどうするのか。夜になったら、と父が答える。眠るンです。
 テレビドラマ「北の国から」第一話の中の会話である。訳があって東京から北海道に移住した、父と二人の子の物語である。ドラマは評判を呼び、同じ俳優たちで二十一年間続いた。放映三十周年の節目に、原発事故が起こる。
 作者・倉本聡は、今日あるを予言していた? ドラマでは、手製の風力発電機が登場する。倉本は自作の手法を、「糖衣錠」と称する。飲みやすくするため外側を甘く作った錠剤だ。包まれているのは、苦い薬である。学童疎開で砂糖に飢えた倉本は、絵の具をなめた。緑や赤は毒といわれ、中間色をなめた。自らを明かさぬ倉本の、本書は貴重な自伝であり、自作解説書である。ドラマの主人公像は、父親を反映していることがわかる。長谷川伸と遠縁の事実も驚きだし、スターたちの素顔も倉本ならではの見方である。
    ◇
 北海道新聞社・1680円

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