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還れぬ家 [著]佐伯一麦

[評者]

[掲載]2013年04月14日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 父が認知症になり、早瀬光二は妻とともに頻繁に実家を訪ねる。同じ仙台に住みながら、父母それぞれとの間に確執を覚える早瀬は、父の症状が進むにつれストレスから心身の苦しみに襲われる。「父が生きているうちに」と、小説「還れぬ家」の連載を始めて間もなく父は亡くなり、その死までを同時進行の形で書いていた途中に3・11の大震災で「小説の中の時間も押し流されてしまった」。父母との、そして自分の過去との和解の時は訪れるのか。「還れぬ家」で描こうとしたことは、震災・津波・原発事故の影響を大きく受けざるを得なかったが、そのことがまた巧まざる同時性を帯び、時代との交信を媒介する「作家」を浮かび上がらせる。
    ◇
 新潮社・2415円

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