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レジリエンス 復活力 [著]アンドリュー・ゾッリ、アン・マリー・ヒーリー

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2013年04月14日

[ジャンル]社会

表紙画像

■どんな領域も同時に扱う多様性

 まだなじみの無い言葉だが、すでに「レジリエンス resilience」は新しい目標として世界に広まりつつある。レジリエンスとは、外部から力を加えられて崩壊しかかった人やものやコミュニティーや組織が、立ち直る力のことである。復活力、復元力と訳されるが、完全にもとに戻ることではなく、働きと健全性が維持できる程度に戻ることを意味する。たとえばいま東日本では、津波対策として極めて高いコンクリートの防潮堤を海岸に巡らす計画が進んでいる。これはレジリエンスとは正反対の方法だ。ひとたび破壊されたら元の状態に戻れない。レジリエンスは防御力ではなく、適応力、敏捷(びんしょう)性、協力、つながり、多様性によって復元する方法なのだ。
 多くの事例が書かれている。ジャマイカでは計画漁業をおこなっていたのに、ウニが全滅し藻類が繁茂しサンゴ礁が死滅した。環境保護は多様な生き物全体を捉える必要がある。本書はそれを金融危機と同じだと見る。金融は同調が起こったときいっきに崩壊する。レジリエンスには多様性が不可欠なのだ。
 自然環境、金融、コミュニティー、組織、個人など、危機が訪れるあらゆる領域を同時に扱う。そこが面白い。結核菌とテロ組織は、活動規模を機敏に拡大縮小する能力に見習うべきところがある。三種の樹木層からなる混成森林を育て、中心を動物保護区としたボルネオの事例では、コミュニティー、経済システム、生物多様性、生態系がレジリエンスを取り戻した。井戸にヒ素が混じったバングラデシュでは、現場の生活を知らない外部の介入が差別や争いを生んだ。パラオでは漁業資源が激減したが、ある管理官が漁師たちと対話し、ダイバーから環境税を取り、コミュニティーを回復させた。レジリエンスはボスではなく通訳型リーダーがふさわしい。学ぶこと満載だ。復興の方法を今なら見直すことができる。
     ◇
 須川綾子訳、ダイヤモンド社・2520円/Andrew Zolli ナショナル・ジオグラフィック協会フェロー。

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